桑田問題

このブログで書く「桑田事件」は1985年に早稲田大学にスポーツ推薦で入学が決まっていたPL学園の桑田真澄が同年のドラフト会議で巨人に1順目で指名されて、早稲田大学へ進学せずにプロ野球チーム巨人に入団した件を言います。

これは野球ファンの方なら誰でも知っているレベルの話ですが、この事件をきっかけに早稲田大学はPL学園からの推薦を一切採らなくなりました。

これは早稲田大学だけにとどまらず早稲田大学以外の慶応、法政、明治、立教の東京六大学リーグの大学もPL学園からの推薦を採らなくなりました。(東京大学は推薦が無い)

この事件は事前に桑田真澄と巨人の間で話がまとまっていて早稲田進学を隠れ蓑にして巨人の単独指名を実現するために行ったとされています。

上記していますがこの事件以降、東京六大学の大学はPL学園から推薦を採らなくなっています。これをもって桑田真澄のせいで後輩が進学できなくなったと批判する意見もありますが、事実関係だけを見てみれば「何故これが問題になるのか?」こう言わざるを得ません。

①桑田真澄は早稲田大学の推薦入学が決まっていた。

②プロ野球のドラフト会議で巨人が桑田真澄を指名。

③桑田真澄は大学進学を辞めて巨人に入団。

表に出ている客観的事実関係はこの3つです。

要するに早稲田大学に推薦入学が決まっていたが、プロ野球の巨人に指名されて進路を変更した。

これだけです。

私がこのブログで言いたいことは「何故これが問題になるのか?」これです。

桑田真澄のとった行動は日本の法律には触れません。

さらに道徳、倫理面でもなんの問題もありません。

大学に進学する予定だったのが、プロ野球チームに指名されて進路を変更しただけにすぎません。

これのどこが問題なのですか?

プロ野球チームにドラフト指名されたので推薦をお断りします。

これでプロ野球に進めばいいだけです。

ところが、これが問題になるのです?

これに関しては現在もそうであると聞いてます。

そうであれば、日本の野球界の体質に問題があると言わざるを得ません。

私も昔、高校野球の現場で仕事をしていたのですが、ある年のドラフト会議の直前にプロ野球チームから、そちらの選手をドラフト指名したいと挨拶に来たのですが「大学への進学が決まっているのでお断りします」と言って断った例を知っています。

私がこの件を知った時「野球の世界はどうなっているのだ?」このように感じました。理由は本人に一切の相談をせずに野球部が断っているからです。

「お前をドラフトで指名したいと言ってきた、どうする?」これがなかったのです。どのような世界でも進路決める決定権を持っているのは本人です。

ところが日本の野球界はそうではないようです。

これが野球だけのことなのか、他のスポーツのことは私は知りません。

ただ、この習慣は日本の野球界では常識として定着しています。

大学の野球部は優秀な選手を獲得したい。

そのため大学の野球部は毎年、決まった高校の野球部から選手のレベルに関係なく一定の枠を設けて推薦入学で選手を入学させています。

高校野球の強豪校が優秀な選手の獲得に「うちの野球部は〇〇大学へ推薦枠を持っている、それで入学させる」こう言って採っているのは、この習慣があるから可能なのことなのです。

この問題を考えると選手の高校入学時にも問題があります。

まず、強豪高校野球部への選手の供給しているのはボーイズリーグのチームです。中学の野球部で軟式野球をしている選手は基本的には獲得の対象外です。

ボーイズリーグのチーム関係者は高校卒業後の進路の面倒をみてくれない高校野球部には選手を進学させません。

理由はボーイズリーグのチームが選手募集をするときに高校野球部、大学野球部、社会人、プロ野球への進学実績を宣伝に使用しているからです。

うちのチームは野球強豪校へのこれだけの進学実績があります。さらに大学野球にも進学実績があります。

これを宣伝文句に選手を獲得しているのです。

当然ですが、ボーイズリーグの関係者は「高校卒業時に大学への進学を面倒をみてくれ」これを要求してきます。要するに高校へ入学させるのだから卒業後の進路も面倒をみてくれ、そうでなければ選手は行かせない。

日本の野球界で卒業後の進路の面倒をみてくれと言われないのは大学野球だけではないでしょうか?

大学卒業後に野球を続けるにはNPB、MLB、独立チーム、社会人野球この4つの選択肢しかありません。これらの野球組織に入るには野球選手としての実力のみが頼りですので大学の野球部に頼ることはできません。

ただ、昔は社会人野球が盛んだったので就職の面倒をみてくれといった要望もあったかもしれませんが、バブルがはじけ社会人野球が縮小するようになってからは、このようなことはないと聞いています。

ここまで書いてきたように日本の野球界は選手を進学させるからには「卒業後の進路の面倒をみてくれ、そうでなければそちらのチームへは進学させない。」これが常識としてまかり通っているのです。

このような構造が出来上がっている関係で高校野球関係者は大学への野球推薦枠を維持することに必死になっています。

当然ですが大学への推薦枠を維持することは強豪野球部にとって、ある意味死活問題です。

ですから高校野球部が主体になって決めた進路を選手の自己都合で変更することは許されない状況なのです。

仮にAという選手がB大学に野球推薦で入学が決まっていたとします。ところがそれを蹴ってスカウトしてきた他のC大学へ進学。このようなことがあるとAの所属していた野球部は野球界で信用を失います。

そうなると「約束通りにAが来てくれなかった、これからはそちらのチームからの推薦は考え直します。」このようにB大学野球部関係者から言われて、Aの所属していた高校野球部は選手の進学先の確保、さらに選手の獲得に支障をきたすようになってしまします。

これが現在の日本の野球界の現実です。

ちなみに、このような構造があるため、これから野球強豪校になり甲子園を目指そうというチームも何とか大学への推薦枠が獲得できないか大学の関係者に必死に食い込みます。当然ですが、理由は選手の獲得を有利にするためです。

一昨年の例ですが金足農業の吉田輝星がプロ入りに当初消極的だったのも、この構造が関係しています。

吉田輝星は卒業後の進路が内定していたといわれています。

自分が進路を変更してプロ野球に行った場合、チームに迷惑をかけ、さらに後輩の進路にも影響を及ぼすと考えていたからです。

この件に関しては内定していた進路先がプロに行っても構わないと言って内定を取り下げたといわれています。

ただ内定していた進路先が「あれだけのスターになったのだから来てもらわなければ困る。」このように主張していれば吉田輝星は高校卒業時のプロ入りは見送らなければならなかったのも事実です。

さらに大学で酷使され、結果としてプロに進めない、進んだとしても大成しないという可能性もあります。

あれだけの才能を持った選手がプロに進んで成功しないことは日本の野球界にとって大きな損失であることは野球ファンであればだれでも理解できることです。

現在の野球界の、この構造に問題があることは誰でも理解できます。

高校生でプロのドラフトで確実に指名される選手は問題がありません。しかし、ドラフトされるかどうかのボーダーライン上にいる選手には大きな問題があります。

プロにドラフトされなければ大学に進学しようと考えても、この時期はすでに大学の推薦入学は終了しているからです。

話を最初に戻します桑田真澄は早稲田大学への推薦入学が決まっていました。ところがプロ野球のドラフトで巨人に指名され、早稲田大学の推薦を辞退し巨人へ入団したのです。

野球強豪高校へ入学したいのであれば、スカウトされればいいだけです。

野球強豪大学へ入学したいのであれば、これもスカウトされればいいだけです。

さらに、大学への推薦入学が決まっていてもプロ野球からドラフトされた場合は推薦を辞退してプロに進めばいいだけです。

この当たり前のことが当たり前にできていない、これが現在の日本野球界の最大の問題のひとつではないでしょうか?

同時に1985年にPL学園の桑田真澄がとった行動が問題になることが問題であるということになります。