マツダスタジアムの失敗

現在のマツダスタジアムがオープンしたの2009年シーズンです。

それでは広島で新球場建設問題が出たのはいつ頃だと思われますか?

それは東京ドームのオープンにともなう新球場建設ブームの1990年代です。

東京ドームのオープンが新球場建設の契機になったことは野球ファンの皆さんは知っていると思います。東京ドームが1988年にオープン。1992年にはロッテが千葉マリンスタジアムへ移転。1993年には福岡ドームがオープン。

この時期パリーグのある選手が「パリーグは野球場が広くなった」と言ってセリーグのチームへFAで移籍しています。もっともこの選手はセリーグで活躍できなくて再びパリーグのチームへ移籍していますが・・・・

続いてですが1997年に大阪と名古屋ドームがオープン。

これに2004年のファイターズの札幌ドームへの移転と続きます。

これを読めばわかると思いますが1990年代は日本のプロ野球は新球場建設ラッシュでした。ついでですがこの時期建設された野球場はそれまでの日本の野球場と違いフィールドのサイズが大きくなりました。と言うよりも国際的な標準サイズの野球場を建設したと言うのが現実です。

東京ドームは国際標準のサイズなのですが構造上、右中間と左中間が非常に浅く現在では狭くてホームランの量産される野球場になっています。

当然ですが広島でも新球場の建設が問題になっていました。この時期すでに広島東洋カープは職員をアメリカの野球場視察に行かせていたようですが肝心の新球場建設の話は具体化しません。

これは広島市の財政問題が大きく関係しています。新球場を作りたいが予算が厳しい。これで新球場建設が遅れたのが現実です。

ただ新球場の建設予定地は現在のマツダスタジアムの場所しかないというのが地元では常識になっていましたし事実、ここに新球場を作ろうという案が1990年代に浮上しています。

ところがこの案は実現しませんでした。

広島市に限ったことではありませんが地方自治体の予算が厳しいのは理解できます。しかし広島東洋カープは地域の公共財産であると言うことを地元が理解していなかったのではないかと考えます。

それと日本ではプロ野球チームのフランチャイズ球場を建設するとき野球場の利用料金で建設費を回収しようとします。何故このような発想をするのか分かりませんがプロ野球開催による経済波及効果を考えるとナンセンスであると考えます。野球場建設では赤字でもプロ野球の試合開催による経済波及効果で元をとるという発想が必要と考えます。事実プロ野球の試合を開催するとチームにもよりますが3万人、チームによっては4万人以上の人を集めます。この方達が落とすお金がどれだけ野球場のある地域に経済的恩恵を与えるのでしょうか?

野球場を建設して利用料金で元を取らなくても構わない。地域への経済波及効果で元は取れる。この発想をしていなかったようです。

この考え方に関しては2021年の現在だからできるのであって「古い時代はプロ野球の試合を開催してもお客さんが入らなかったではないか?」この反論が出てくると考えます。

ただ、これは日本の例ではありませんがアメリカのボルチモア・オリオールズの野球場が1992年にオープンしています。この時お客さんの入らないチームの代名詞のようなチームであったボルチモア・オリオールズは新球場建設によりお客さんが入るようになりました。

これはこの当時アメリカで多かった1970年代に建設された野球もアメリカンフットボールもできる近代的多目的スタジアムがファンに飽きられていた時期であり、クラッシック調の野球場(日本で言えば甲子園球場)を作ったところ大評判になりお客さんが入るようになったのです。

少なくともアメリカではお客さんに評判の良いクラシック調の野球場を作るとお客さんが入るようになることが証明されているのです。

これはアメリカだけではありません。日本でも広島にクラッシック調の野球場、マツダスタジアムがオープンしてからはお客さんが入るようになりました。

広島は旧市民球場の老朽化が問題なっていました。これに加え1990年代はプロ野球チームの野球場の新規オープンが続いていました。しかし広島は新球場の建設が決まりませんでした。旧市民球場がプロ野球チームのフランチャイズとして相応しくなく使えない状況になっているにも関わらずです。

当然ですがこれには広島市の予算の問題がありました。

ただそれ以上に大きな問題がありました。

広島の松田元オーナーの経営姿勢です。

カープには新しい野球場が必要だからはやく新球場を作ってくれ」このように広島市に要請。さらに地元広島の財界にも新球場を建設するように強く働きかけていれば新球場の建設はもっと早くに決まっていたと私は考えます。

なんと言っても広島で新球場の問題が発生していたのはプロ野球、広島東洋カープがフランチャイズとして使用していたからです。そうでなければ古い野球場を改修工事をして引き続き使用していればいいだけです。

1990年代後半でしたがインターネットで広島東洋カープの地元の中国新聞のサイトで新球場問題の記事を読んだのですが肝心の広島東洋カープの松田元オーナーが「カープは使用させて頂く身ですから」と他人事のような発言をしていたのを覚えています。

広島東洋カープはオーナーが企業ではなく松田元が個人でオーナーをしています。他のチームのように赤字を出して親会社が負担することもできません。独立採算で利益を出さなければならないのです。利益を出さなければ最悪倒産してチームが消滅する可能性さえあるのです。これは日本のプロ野球では特殊な例です。

だからと言って積極的に野球場を作ってくれと地元に働きかけないのは経営姿勢に問題があると言わざるを得ません。

とにかく1990年代には新球場の問題はありました。ところがいつまで経っても新球場の建設は決まりません。はやく新しい球場を作れという意見はずっと地元では出ていたにも関わらずです。

私はこのブログで広島東洋カープの松田元オーナーを批判していますが同氏が新球場の建設に積極的になっていて地元に対して新球場の建設を要請していれば実現していたことですから当然です。

結局2009年に現在のマツダスタジアムがオープンするのですが、いつまで経っても新球場の建設が決まらなかった広島でこの野球場建設が決まった最大の理由は2004年のプロ野球球団削減問題が原因です。この時プロ野球関係者の間で地理的に近く同じリーグの阪神タイガースとの合併案が出ています。これは近鉄、オリックスの合併が決まりチーム数を偶数にする必要から出た案で同時にいつまで経っても新球場が建設されない広島にプロ野球関係者が業を煮やした結果でもあります。

結果としてこの時は楽天が新規参入を決め仙台をフランチャイズにすることも決まりました。

この時プロ野球チームが誕生した仙台、宮城県では新球場の建設案が浮上します。

これでお尻に火がついたのが広島市です。宮城県が広島市より先に新球場を建設した場合、広島市は面目丸潰れです。

これで広島の新球場建設が決定したのです。

ちなみに宮城県の新球場建設計画は東日本大震災で白紙になりました。その代わりスタンドの増設、リニューアルをしてプロ野球チームのフランチャイズとして相応しい野球場にしています。

この時の楽天の新規参入、宮城県仙台市をフランチャイズにすることがなければ現在でも広島は古い市民球場を使用していた可能性があります。

広島東洋カープは長く低迷期がありました、これは広島が親会社を持たない個人がオーナーで独立採算という理由もあったと考えますが松田元の経営姿勢も加わっていたのではないでしょうか?

新球場ができて広島はお客さんが入るようになりました。これでカープの経営状態も改善されていると考えます。事実カープの選手の年俸は低迷期では考えられない額に増えています。はっきり言えば貧乏球団ではなくなっています。

ただ広島に新球場が建設されて問題が全て解決された訳ではありません。

2009年にオープンしたマツダスタジアムの収容能力は3万人です。

これを知らない方が結構多くいます。現在のプロ野球の球場でもっとも新しい球場なので3万5千から4万人収容だと思っていた方が私の知人にもいます。

マツダスタジアムが3万人収容で建設されたのは1970、1980年代カープ黄金期にもお客さんが入らなかったからです。それでNPBの基準の最低限の3万人収容で建設されたのです。

ところが近年カープのチケットが手に入らない問題が発生しています。昔はお客さんが入らなかったこれは事実です。ところがマツダスタジアムが建設されてからは他のチームもお客さんが入るようになっいていました。

広島以外にも近年ではお客さんが入るようになっています。2018年シーズン千葉ロッテは黒字を出しています。翌年も黒字でした。これだけではありません。東京ヤクルトも2019年は黒字を出しています。これ以外では横浜DeNAも黒字経営であると聞いています。

昔と違い現在はプロ野球は野球場で観戦するスタイルが一般に定着しています。

それ以前に福岡に移転したホークスは合併問題のあった2004年時点すでにお客さんが入るようになっていました。地理的に近く同じ地方都市の福岡でお客さんが入ることが常識になっているにも関わらず広島は3万人収容で野球場を建設するという失態をおかしているのです。

昔黄金期にも関わらずお客さんが入らなかった。これで収容人数に慎重になるのは理解できます。

ところが時代が変わったことに関係者が気付いていなかったのです。

新球場を3万人収容で建設するのは理解できます。しかし将来的にスタンドの増設ができるように造られているのでしょうか?

広島東洋カープは企業がオーナーのチームではありません。チームを強くするには資金が必要です。その最大の資金源が入場料収入なのが現実です。

もし広島が4万人収容の野球場を作っていたらどうなっていたか考えてみましょう。

この1万人増えたお客さんの入場料を1人3000円とします。これに1万を掛けて現在のNPBは年間143試合ですから主催試合が71または72試合なので71を掛けると21億3千万円です。

つまり広島東洋カープの売り上げが年間20億円以上増えるのです。

このお金があれば21018年オフにFAで巨人に移籍した丸佳浩の引き留めも可能であったと考えます。

つまり3万人収容のマツダスタジアムを建設したことは広島東洋カープには失敗だったのです。

今からでもマツダスタジアムのスタンドの増設をするべきと私は主張します。