円谷英二のオプチカルプリンター購入にまつわる問題

1965年に円谷英二がアメリカ、オックスベリー社の高性能光学合成機オプチカルプリンターを何の躊躇いも迷いもなくポンと注文したことは有名な話です。

これは当時の特撮合成の最新鋭の高性能光学合成機材で世界に2台しかなかったものです。

ただ問題がありました。

価格が高く円谷プロには支払い能力がなかったのです。

円谷プロの社員がこの注文を知ってアメリカにキャンセルの連絡を入れた時にはすでに船に乗って日本に向かっていました。これも経営感覚のない円谷英二らしいエピソードいえばそれまでですが。

円谷英二に関する本を読むと、この方は特撮技術に関しては超一流の職人なのですが経営者としては二流にすらなれなかった方です。

円谷プロダクションとして独立する前、東宝の特技部門だった当時のことですが東宝の経理担当の方が円谷英二が予算をオーバーしないように目を光らせていたそうです。そうしなければいくら予算を使うかわからなかったそうです。

ちなみにアメリカ、オックスベリー社も「世界の円谷英二からの注文だから」と何の迷いもなく注文に応じたそうです。

これで円谷プロは上を下への大騒ぎです。

上記していますが支払うお金がありません。このまま購入した場合、最悪倒産するかもしれないのです。

そこで円谷プロの関係者はこの機材を購入してくれるところを探します。

それで、この時TBSがこの機材の支払いを肩代わりすることになります。同時にこれを使った番組制作を依頼します。

これにより作成されたのが「ウルトラQ」です。

ただ最初から「ウルトラQ」のタイトルではなく最初は「アンバランス」という番組名で制作は進んでいました。

これは日本版「ミステリーゾーン」(原題 The Twilight Zone)のような作品を作ろうというコンセプトで制作が開始されたのです。ところがTBS、スポンサーから円谷が作るのであれば怪獣物にしてくれという依頼が入り怪獣作品になったのです。

ただ「アンバランス」で撮影が進んでいた関係で第4話「マンモスフラワー」、第28話「あけてくれ!」と言った怪獣物ではないエピソードも制作されます。

特に第28話「あけてくれ!」は最終話ですが怪獣が出ない関係で本放送で放送されていません。

ちなみに「ウルトラQ」は全28話を先にすべて撮影をしてから放送が開始されています。そのため放送順番をどうするかTBSが頭を悩ませたというエピソードがあります。

先にすべてののエピソードを撮影した事実を考えるとオプチカルプリンターの注文は1964年であったかもしれません。これに関しては詳しい資料がないので推測で書いています。申し訳ありません。

さらに言えばこの「ウルトラQ」はフジテレビで企画が出ていた「WOO」をもとに制作が実現した番組です。

フジテレビで「WOO」という番組の企画が出ていたのは事実ですがこれは制作が実現しませんでした。

問題のオプチカルプリンターの購入に関してですが、現在では「WOO」の企画が出ていたため、この番組に必要な関係で円谷英二が購入をしたという説があります。ただ、私がこのような特撮関係の情報に触れるようになった1980年代半ばにはこのような情報はありませんでした。「WOO」とオプチカルプリンターの購入には何の関係もなかったのです。

このようにフジテレビで企画が出ていた「WOO」の撮影に必要なためオプチカルプリンターの購入をしたという説は私の記憶ではインターネットが普及した2000年代になってから出てきた説です。

私が特撮関係の情報に触れるようになった時期は上記していますが1980年代半ばです。

この当時は大人が特撮番組に興味を持つことは恥ずべき行為で、世間が私のような存在を受け入れていない時代でした。ついでにいえばオタクと呼ばれるようになった最初の世代でもあります。

ただ私からすれば子供の時に好きだった「ウルトラマン」「仮面ライダー」の制作の裏側を知りことができるようになった感動のことの方が大きかったので世間の目など気にすることなく特撮番組の情報を集めていました。

少々話がそれましたがオプチカルプリンターの購入と「WOO」の制作には何の関係もなかったというのが、特撮関係の情報が世間に出回り始めた1980年代半ばでは常識として定着していました。

これに関しては50年以上も前の話なのでこれからも真相に関する話は出てこないと考えます。

少なくとも、このような情報が世間に出始めた当時、出ていなかった説が2000年代以降出てきたのはインターネットの普及が関連していると考えます。

インターネット上では自身の存在感を示したいという面倒な連中がいます。早い話、話をでっち上げて注目を引こうとする連中がいるということです。以前も書きましたが仮面ライダー2号の佐々木剛は仮面ライダー出演中は免許は持っていませんでした。これは本人の自著にも書かれていることです。ところがWikipedeiaでは、これを書いている2021年5月12日現在でも

『仮面ライダー』の撮影中に免許を取得し、バイクの上にうつ伏せになって運転する「飛行機乗り」を披露している。

このようにガセ情報を書き込まれています。

円谷プロダクションがオプチカルプリンターを注文したのは「WOO」とは関係のないところでの話であると考えます。

もし、こ私の説が間違っているという方がいらっしゃったら根拠を提示して説明をお願いします。

私も必要な資料を用意して事実確認をさせていただきます。

このようにオプチカルプリオンターの代金はTBSが肩代わりする。その代わり、この機械を使って新しい番組を作ってくれ。それで始まったのが「ウルトラQ」です。

更に「ウルトラQ」で怪獣ものが大ヒットした関係で制作されたのが「ウルトラマン」「ウルトラセブン」です。当然ですがこれらの作品も大ヒットします。

重要なのは、このような経緯でウルトラシリーズの放送が開始された関係で円谷プロダクションの制作する特撮作品はTBSのコンテンツになったことです。

このことを円谷プロダクションの関係者がしっかりと認識していなかったことが後の騒動へとつながることになります。

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