機動戦士ガンダムは失敗作?

「機動戦士ガンダム」は本放送当時は大失敗作でした。

今回はこのテーマについて書いてみたいと思います。

1970年代のロボットアニメのフォーマットを作ったのは「マジンガーZ」です。人間がロボットに乗り操縦するという設定はこの作品ではじめて採用されました。これ以前で有名なロボットアニメは「鉄人28号」ですが、これは主人公がリモコンを使用して操縦していました。実写作品では「ジャイアントロボ」が有名ですがこれも主人公が時計に内蔵された操縦機を使用して操縦していました。

この2つの作品はどちらもお笑いのネタにされているのでご存知の方も多いと思います。

「鉄人28号」はコントロラーのレバーが2本しかない。

「ジャイアントロボ」は自律しているとしか思えない戦闘をしている。

このような作品しかなかった当時、主人公が主役ロボットに搭乗して操縦をするという画期的な設定を採用したのです。

「マジンガーZ」はその後、様々な強化をされて強くなっていきます。最大の強化策は空を飛ぶために登場したジェットスクランダーで間違いがないでしょう。

「マジンガーZ」という作品の最大の功績は視聴率を取るだけでなく、玩具が売れたのです。それも半端なく。

現在でも販売されているバンダイの超合金シリーズはマジンガーZを販売するために立ち上げられたブランドです。買ってもらえなかったことを覚えています。

これ以外に大ヒットしたのはジャンボマシンダー(60cmサイズのフィギュア)が有名でしょう。これも買ってもらえませんでした。

この作品は第2弾「グレートマジンガー」を放送します。ただ同作は元から強いのが災いしたのか人気は思ったほどではなかったそうです。私も子供心に最初から強すぎるので今ひとつ熱狂しきれなかったことを覚えています。事実、視聴率、玩具の売り上げは前作ほどではありませんでした。

はっきり言えばデザインを変更して強くしました。これだけが売りの作品でした。

このため第3弾はデザイン、設定を一新「UFOロボ グレンダイザー」が製作されます。

同作は「マジンガーZ」の主人公、兜甲児がレギャラーで登場しています。マジンガーZとの共演を期待したのですが残念ながら実現しませんでした。東映まんがまつりではグレートマジンガーとの共演が実現しています。(操縦は兜甲児)

この作品は視聴率、玩具の売り上げともに成功を収めます。

この時代マジンガーシーリーズ(Z、グレート、グレンダイザー)以外のロボットアニメが製作されるようになります。マジンガーシリーズを製作していた東映がマジンガーシリーズの原作者、永井豪と組んで製作したのが「ゲッターロボ」です。

この作品はマジンガーZ1体で玩具が売れるのだから3体出せば3倍売れるのではないか?

このような意図のもと製作された作品です。

この作品は絶対に実現不可能な合体変形をすることで有名です。ゲームの「スーパーロボット大戦」で同作のロボットを知った方も多いと思います。

この作品は第2弾「ゲッターロボG」も製作します。OPの主題歌が同じ曲が使用されたことでも有名です。この曲は好きなのでよく聴いています。

このシリーズ以外でヒットした作品は「勇者ライディーン」でしょう。

これはシリーズの前半の総監督を「機動戦士ガンダム」の富野由悠季が務めたことで有名です。

これ以外では「超電磁ロボ コン・バトラーV」これの第2弾「超電磁マシーン ボルテスV(ファイブ)」が成功した作品として有名です。

ここで重要なのは「超電磁ロボ コン・バトラーV」が1977年の放送。「超電磁マシーン ボルテスV(ファイブ)」が1978年の放送ということです。

さらに「超電磁ロボ コン・バトラーV」のED「行け!コン・バトラーV」で

身長57メートル 体重550トン

この歌詞があることです。

この曲の影響でこの当時のロボットアニメの主人公ロボットはこのサイズでなければならなかったことです。特にスポンサーの玩具会社には重要だったそうです。

これ以外にも当時のロボットアニメには重要な設定がありました。

それは敵が人間以外の知的生命体ということです。人間以外の知的生命体が地球を侵略するために毎週新しいロボットを登場させ、主人公ロボットが倒すという勧善懲悪な内容です。

ラスボスでこの設定ではなかったのは「マジンガーZ」のDr.ヘルだけではないでしょうか?

ちなみにマジンガーZは身長は18メートルという設定です。

ガンダムも身長は18メートルという設定です。

現在、横浜で動く実物大のガンダムが展示されていますが「18メートルといはこんなに大きのか?」こう思います。動画で見ただけですが。

現在でもそうですが、この当時もロボットアニメは玩具を売るために放送されていたのです。

「機動戦士ガンダム」の放送が1979年です。つまり「超電磁マシーン ボルテスV(ファイブ)」の翌年です。

当然ですがスポンサーの玩具会社も玩具を売るために製作費を出しているのです。クローバーという会社でした。この会社は「機動戦士ガンダム」放送後倒産しています。同社の倒産に「機動戦士ガンダム」がどの程度関係があるのかは正確なことは分かっていません。これに関しては「諸説あり!」といったところでしょうか?

長々と書きてきましたが「機動戦士ガンダム」もこの当時のロボットアニメビジネスの一環として製作された作品です。

ところが富野由悠季が監督です。

ロボットアニメのフォーマットを思い切り無視した作品を作ります。

ロボットは登場しますがモビルスーツという名称です。

人間同士の戦争が舞台です。

作品の初期に登場した敵ロボットはザクのみです。

さらにガンダムは身長が18メートルという設定です。

第1話の放送後、富野由悠季の元に関係者から抗議の電話がジャンジャンかかってきたそうです。

なんでこんな作品を作ったんだあああああああああ

これが現実です。

事実「機動戦士ガンダム」は児童層に受け入れられずに、玩具も売れない状態になります。

つまり「機動戦士ガンダム」は本放送当時は失敗作と評価されていたのです。

この時期、富野由悠季は関係者からかなり批判されただけでなく嫌味も散々言われたそうです。芸人の方がテレビの仕事で富野由悠季に会った時「聞きたくない話をたくさん聞かされた」このように言っていました。

ところが関係者が予想をしていなかったところで人気が出ました。

大学生を中心とした世代に非常に高い人気を取っていたのです。事実、視聴率は悪くはありませんでした。

ただ大学生を中心とした世代が買う商品がありませんでした。そこでレコード会社がBGM集を販売します。2021年の現在では映像作品のBGM集は珍しくありませんが、当時はそんなものが売れるのか?

これが常識でした。さらに最初にリリースしたBGM集のレコードはあまり売れませんでした。

ジャケットがこれです。

ところが2枚目に販売したBGM集のレコードは売れました。

ジャケットはこれです。

2枚目のレコードは大ヒットします。これは安彦良和のイラストがヒットの要因と言われています。この後販売されたは同作のレコードは全て安彦良和のイラストを使用しています。

この2枚目のレコードのヒットもあり関係者が放送話数を延長できないか?

こう考え打診したそうですが、ストーリーの流れもありこれは実現しませんでした。

ただ「機動戦士ガンダム」は本放送の後にヘビーローテーションで日本全国で再放送がされるようになります。私はこの時期に全話録画していました。当然ですがベータマックスで。

これに加えてプラモデルの販売が始まり大ヒットします。

このプラモデルは非常に画期的でした。

それまでのロボットアニメのプラモデルは完成したらモーターで動くというのが一般的でした。その代わり見た目は「正直違うだろ?」こう言いたくなる。そういうものでした。

ところが「機動戦士ガンダム」のプラモデルは1/60、1/100、1/144スケールとミリタリーモデルと同じサイズにします。さらに完成しても動きません。その代わりディスプレイして楽しむという当時のロボットアニメのプラモデルとは一線を画したものでした。

これで現在でも続くロボットアニメはプラモデルを売って利益を出す。このビジネスモデルが確立します。

これにテレビシリーズを再編集した劇場映画が公開され大ヒットします。

これは最初は松竹も3部作であることは知らなかったそうです。最初の劇場映画がヒットしなければ第2部、第3部の製作はしない予定だったそうです。事実劇場版第1作は「機動戦士ガンダムⅠ」とはなっていません。「機動戦士ガンダム」です。第2作は「機動戦士ガンダムⅡ」第3作は「機動戦士ガンダムⅢ」となっているのはこのためです。

当然ですが映画は大ヒット。松竹には多額の興行収入が入ってきます。

これでプラモデルの売り上げがさらに増えます。

この1980年代はプラモデルのコンテストがかなり行われていました。これは「機動戦士ガンダム」のプラモデルが売れたためです。

私も作りました。現在でも作っています。

このように「機動戦士ガンダム」は放送当時のロボットアニメのフォーマットを完全に無視。破壊します。これが関係者の逆鱗に触れ失敗作と評価されます。

ところが、その後このブログで書いているように状況が一変します。

現在では「機動戦士ガンダム」は人気作品になった。ではなく巨大ビジネスになったと言われています。

これも全ては当時のロボットアニメのフォーマットをぶち壊した富野由悠季の功績と言っていいでしょう。

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