田中将大と楽天の契約は野球協約違反です

1月30日に田中将大がNPB東北楽天ゴールデンイーグルスと2年契約を結んだことを記者会見で発表しています。

あれだけの選手なのでNPB復帰は非常に喜ぶべきことであると考えています。

ただ、今回の楽天との契約内容に私は疑問を持ちました。

理由は日本人選手にはチームに保有権が発生するからです。保有権とはチームと選手との間に一定の期間を経なければチーム側に独占交渉権が存在し、選手は他のチームと自由に契約できない制度を指します。

これは外国人選手には存在しません。

事実、NPBでプレイしている外国人選手は契約終了と同時に自動的にFAになります。このためNPBでは日本人選手以上に外国人選手の年俸が高騰しているのです。

今回の契約は2年契約ですが1年目(2021年)のシーズン終了後に田中将大に選択権があることとになっています。2021年シーズン終了後にMLBチームからのオファーがあれば田中将大は楽天との2年目の契約を破棄して自由にMLBチームと契約ができるという内容です。

しかし田中将大のプロ入りは2007年で2013年のシーズンオフにポスティングでMLBニューヨーク・ヤンキースに移籍しています。

つまりNPBでの在籍期間は7年です。

当然ですが2021年シーズン終了時点でNPBでの在籍期間は8年になります。

この状況では田中将大には国内FAの権利しか発生しません。

海外のチームと自由に交渉のできる海外FAの権利は9年間在籍しなければ与えられないのです。

つまり今回の田中将大と楽天の契約は野球協約違反になるのです!

何故か、このことを指摘しているNPB関係者はいません。

現在の野球協約に「ポスティングで移籍した選手はNPBに復帰した後は保有権は発生しない」この文言が存在すれば話は別ですが、そのような文言はないでしょう。

1995年に野茂英雄がロサンゼルス・ドジャースと契約した時点ではNPBを任意引退した選手は他のチームとの契約を禁止する文言があったのですが、これには外国のチームは含まれていませんでした。野茂英雄はこの野球協約の抜け道を利用してMLBロサンゼルス・ドジャースと契約をしたのです。このときNPBは大慌てで野球協約を改正したことは有名な話です。

今回の田中将大と楽天の契約が認められた場合、今後ドラフト会議で指名した選手に野球協約で定められた期間を満たさなくてもFA権を与えるという条件を入団交渉の材料に与え、これを認めなければならないことになります。

しかし、当然ですがこれは現在の野球協約ではこれは認められていません。

ついでですがドラフトで指名した選手のトレードも現在の野球協約では認められていません。これは1978年に起こった巨人と江川卓の「空白の一日事件」がきっかけで定められた制度です。

ただ、これに関しては現在でも入団交渉時にポスティングでのMLBチームへの移籍を入団交渉の条件に与えるということが平然と行われていてNPB関係者は誰もこれを問題視していません。

入団交渉の条件にポスティングでの移籍を入れていて、これが問題になっていない現状を考えるとドラフト指名した選手のトレードも認めるべきというのが私の意見です。

ちなみに「空白の一日事件」は当時の野球協約の不備を突いたものなのですが、この件は少なくとも当時の野球協約には違反していない内容です。当然ですが当時の野球協約に照らし合わせた場合この契約は合法です。読売はこの野球協約の不備を弁護士を使って調べて突き止めています。それを世論の反発を背景にして一方的に無効としてしまうという法治国家としてありえないことをNPBはしでかしているのです。

要するに当時から野球協約には問題があったのです。

今回の田中将大と楽天の契約に関してNPB関係者が何も問題視していないことを考えるとNPBの「野球協約は法律の程をなしていない」という2004年に起こった球団削減問題時のNPBコミッショナー根來泰周の言葉をあらためて証明しているとも言えます。さらに、同氏はこの時にNPBのコミッショナーには何の権限も無い飾りであることを公言していますし、事実NPBのコミッショナーは読売新聞の人事でしかない現実があります。

根來泰周はNPBのコミッショナーになる前は弁護士をしており法律の専門家です。そのような方がNPBの野球協約の問題を指摘しているにも関わらず、その後も何故かこの問題は放置されたままです。

これに関してはNPBにも問題がありますが放置状態を追求していないプロ野球選手会にも問題があると言えます。同時にこれを問題視しないマスコミ、さらに私たち野球ファンにも問題があると言えます。

野球協約は法律の程をなしていない」状態から法律のレベルに改正する必要があると考えます。

同時に今回の田中将大と楽天の契約をなし崩し的に認めるのではなくNPBのオーナー会議等で議論し野球協約の改正をした上でこの契約を正式に認めるべきと考えます。

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